地域の力
昨年2月に設立された綾部市内の自主防災ネットワークの総会を伝えるあやべ市民新聞5月13日の記事に対して、5月20日の紙面で、読者から「行政の予算措置はどうなっているのか」と問いがあり、「行政が組織に金銭的な裏付けしないと災害時に協力を得られない」「自主防災組織の根底にあるのは、見返りではなく共助の精神」という議論があった。
防災のみならず、防犯や福祉や教育など、あらゆる社会的な機能は、市民による自主的な組織が大きな役割を担いつつあります。これには2つの背景が思い浮かびます。一つは市町村合併や過疎化により行政の合理化が進められていること。もう一つは、高齢化や技術の進歩、問題の多様化など社会の変化に伴い、必要とされる社会的な機能が増大したこと。
前者について、綾部市で見ても、昭和の大合併以前には同じ面積の中に役場は10以上ありました。この平成の大合併では、未だ支所として多くの役場が残っていますが、今後は続々と廃役場や廃校が各地で生まれることでしょう。「地域マネージャー」の必要性が求められている(*1)のは、失われた身近な存在としての役場の機能を新たに再生することだと思います。これはNPOや自治会などが担うこともありますし、行政が縦割りを脱し横断的な地域担当を設けることもあるでしょう。綾部市が奥上林地区に設置したいきいきセンターも地域マネージャといえるかもしれません。
後者について、教育でいえば綾部も例外でなく、毎年多くの不登校が顕在化しています。代替の教育機関が民間にもありますが、数は十分ではありません。義務教育が教育を受けさせる親の義務だとしても、身近に代替機関がなければ、すべてを親のせいにすることはできないと思います。綾部市立病院は表彰を受けるなど、順調な経営と聞いていますが、他の市区町村を見れば、公営病院の経営難はよく伝えられます。これもまた医療の進歩や社会要請の高まりなどの変化に因ると言えるかもしれません。
「きれい事だ」とおっしゃる読者の声も分かります。防災以外でもやはり、ボランティアの手で介護や福祉に役立ったという報道も同じ論理できれい事だと私は感じています。もちろん限られた紙面の中で難しいことやきたないことよりきれいなことのほうが聞きたいニュースです。ボランティアが無償とは限りませんが、ボランティアや自主活動によって社会貢献をする綺麗なことが否定される訳はありませんし、伝えられた防災研修会を開くことも必要なことです。「きれい事だ」という論理は予算はどのくらいあり、それが持続可能かを問うのだと思う。
綾部市は毎年300名以上の人口が減り高齢化も進んでいます。その傾向は中山間地になりますとさらに顕著です。そういった地域の自主活動と、密集地の自主活動とで一様な機能がもてない以上将来への不安はぬぐえません。「私のしごと館」が閉鎖されても、国民が健康で安全に、教育を受け文化的に暮らすための基本的な社会的機能を止めるわけにはいきません。「小さな政府」に関する議論にもありますが、国・地方・民間の役割は今後変化していく中で、財源は国から地方さらに民間に流れて行くことが予想されます。行政が合理化され、求められる社会機能が民間にゆだねられる部分があるなら、当然かもしれません。その時に問われるのは地域の力だと思います。
「地域の力」の著者大江正章氏は高齢化が進み、人口が減り、「限界集落」が生まれることが問題なのではない。都市であれ農山村であれ、社会的な関係性から切り離されたとき人は孤立し、そこで生きていくことの価値や意義が失われたとき、人と地域は活力を失う(世界2008年8月号)
と言う。紙面は綾部市の「市民性」で結ばれた。私たちが住んでいる綾部に対して誇りを持つこと。少なくともこれだけは、地域の力を強くするために必要なことだと思います。(マエダ)
- 綾部里山交流大学6月講座
- *1「地域マネージャー」の必要性が求められている
- 中山間地域研究センター「
昔の小学校区程度の地域を新たな生活圏(郷:さと)と仮定し、この「郷」に対して、外部のNPOや地域マネージャー、学生レンジャー等が新しい地域の「結び目」=「結節機能」となって、集落の人たちと一緒に、地域資源の掘り起こし、地域の活性化、地域外との交流事業に取り組みました。
」 - かみえちご山里ファン倶楽部「
広域合併、道州制へと行政密度が希薄になる未来では、各地域が従来の町村区分よりさらにコンパクトな「クニ」として、自前の道と自前のまかないを目指す動きにならざるを得ない。
」 - 日南町 校区まちづくり協議会では地域の諸問題の解決に地域住民が主体的に取組み、行政も地域担当職員を設けた。校区が活動計画を作成し、予算要求を行うことも可能。
- 大江正章氏「
国と自治体が出資し、運営は過疎地域の実情に精通したNPOが共同で担う中山間地持続的発展協力事業団を設立して、新たな公共=コモンズの担い手を養成し、各地に配置する。
」(世界2008年8月号)
- 中山間地域研究センター「

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