パンのみによってでなく象徴によって生きる

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「人はパンのみにて生くるにあらず」。

ここは日本ですので、ポストハーベスト入りの外麦パンより、

山水で育ったごはんがいいですよね。

......という話ではなく、

パンのみによってでなく、××によって。

の××に何が入るか。

もちろん、今ますますパン(生存権)が重要であることは折り込み済みですが、

ここでは××に象徴(シンボル)と入れてみます。

人は象徴を操作することによって生きているというわけです。

(1)
人の周囲には社会や世界が広がっていますが、

人は記号や言葉によって社会や世界を認識するので、

直接に社会や世界と関わっているようでいて

象徴を介して関わっているともいえるのです。

服は寒さを防げればよいのですが、就活ルックのように

色々と衣服に気を遣うことになるのは服が防寒上の機能だけでなく

社会との関わり方を象徴するという機能をもつようになっているからでしょう。

羽根がなくても募金はできます。でも赤い羽根があると募金が進んだりします。

つまり上手に象徴を操作することで世界との関わりを改善することができる。

馬路村の村長が綾部で講演された折も、村のイメージそのものを売るようにしたので

イメージと村が違う場合は村を直していったという趣旨のことを

言っておられたように思いました。

象徴は大きな機能を果たしているだけに、象徴に傷がつくと一気に逆効果ということもあります。

食生活にあまり気を遣わない人でも、土産物に化学薬品が入っていたり外国産原料だったりすると

何となく面白くないのはそういうわけです。

土産物を食べるのは飢えを満たすためというより象徴や意味を食べているからです。

世の中はオールオアナッシングでなく折り合いをつけ敷居をひくことによって

成り立っている面もあるので、多くのことは混沌としていますが、

せめてウェイトの高い象徴を重点的に整えてみようということになります。

(2)
一方で、貨幣が自己目的化しないほうがいいように、

象徴操作も自己目的化しないほうがいいです。

むしろ象徴なくして社会が回転したほうがいい面もあります。

アントレプレナーによって何か新しいものが作られると、

アントレプレナーの物語が象徴となりカリスマの源泉となりますが、

遅かれ早かれアントレプレナーが退場して組織化の段階が訪れます。

成功した原因へのこだわりが失敗する原因になる、ような流れは避けたい。

すると組織やシステムへの信頼のほうが獲得目標になります。

シンボルから歯車へ、です。

よくわからないけれど、何となくうまくまわっている、みたいな。

地域おこしのためには多くの場合、マスコットキャラクターを作りますが、

各々のマスコットキャラクター自体はそれぞれに異なっていても

マスコットキャラクターを作ろうとする努力自体はみんながすることなので、

何となく金太郎飴感が漂いがちになるのも事実です。

むしろ「脱マスコット宣言のまち」をめざしたほうが断然、独自性があるかも。

象徴だけに依存しようとすることで象徴操作に失敗する、というような可能性が常にあるわけです。

(3)
「だったら何も象徴を作らなくてもいいんですか」。

実は物事は連動していて、一事が万事ということもあるので、

省エネにしても無添加にしても、せめて象徴的な点については改善しようという努力が、

結果としてトータルな改善に結びつくという効果を期待したいのです。

あるいは、象徴なら象徴だけを独立して操作するのでなく、

システム全体を改善して、その結果として象徴が輝くという因果関係です。

景観というのは、美しい景色のことですか。

景観は地域社会のシステム全体のことで、景観は結果だと思うのはそういうわけです。

人は食べ物だけで生きているわけではないというのは、

何も食べなくても生きていけるというわけではなく、

地域社会が持続性のある理念にもとづいて生き生きとしたシステムとして回転している

ということの結果として毎日のおいしい食事や、美しい景観や、特産品があったりする

ということのように思うので、「システムの裏打ちのない象徴より、システムに裏打ちされた象徴」、

「象徴を改善するためには、象徴だけを改善するより、象徴の前提となるシステムの改善」

というのがとりあえずの結びなのです。(あさくら)

象徴としての薪
背中の薪......昔は勤勉の象徴、今は脱枯渇資源の象徴

このブログ記事について

このページは、ayabeが2009年3月29日 23:03に書いたブログ記事です。

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