大失業時代と農業

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今週の日本の国会では定額給付金の話題が議論されていましたが、先週イギリスのブラウン首相は5億ポンド(679億円)の雇用対策を発表しました。これまで短期的政策として13億ポンド(1,767億円)の予算で、ジョブ・センターの六千箇所の設置してきたことに加え、長期的な政策として失業者を雇用したものに対するインセンティブを設けるというもの(参考)。

これらイギリス政府の急速な失業対策確立に呼応して、企業側にも、あらたな動きが出てきた。Vauxhall自動車では、既存の賃金体系、労働時間体系を見直した上で、Ellesmere Port,Cheshire,Lutonの三工場で、五千人の雇用をすると発表した。また、スーパーマーケット大手のMorrisons は、5,000人の新規雇用を発表した。(Sasayama's Weblog - 2009/1/12

また、オバマ米次期大統領は、グリーン・ニューディールとも言える政策を発表しました。今後10年で約15兆円をクリーンエネルギーに投資するいうもので、以下のような目標を示されています(参考)。

  • 500万人の雇用を生む
  • 2015年までに100万台のハイブリッド車を走らせる。
  • 風力や太陽光、次世代のバイオ燃料による自然エネルギー電力を2012年までに10%、2025年までに25%を達成する。
  • 温室効果ガスを2050年までに1990年比で80%削減する。
  • 輸入石油を減らす。
  • (ecool - 2009/1/20)

不況政策というくくりで単純に比較できませんが定額給付金の総額2兆円規模といわれる予算がいかに大きいかが分かります。

今年に入りまして、農水省は全国の農業法人等の緊急求人情報をまとめ(参考)、求人数は1810人(参考)で、各地では就農相談会が盛況だそうです

雇用のてこ入れは必要ですが、農業の担い手不足は近年ずっと課題であり続けた一方で、日本の失業者は平成15年の357万人をピークに上がり続けていました。この5年は減少傾向で平成20年の総務省の調べでは256万人でした(参考:エクセルファイル)。今年100万人増えたとしても、5年前の水準です。失業者が増えたから人手不足が深刻な農業分野への再就職と簡単にはいかないでしょう。

雇用対策で就農相談会、現場には戸惑いも 福岡(朝日新聞 - 2009年1月7日)

当の農業関係者からは「農業の基盤そのものが弱まっているのに、失業者の受け皿になるゆとりがあるのか」と戸惑いの声が上がる。 (中略)福岡県大木町の農事組合法人「きのこの里」の水落重喜理事長は「確かに農家の人手は不足している」と話すが、一方で「高い給料は出せない。都会で年に500万円の所得を得ていた人が、200万円でもいいと言うだろうか」と疑問を示す。(中略)JA福岡中央会は「肥料や原油の高騰でコストがかかるなかで、再就職を希望する人を雇う余裕はないのでは」と指摘する。(中略)水落理事長は「きちんと受け入れられるように、農業自体の基盤が強くなるような政策が必要」と注文している。(朝日新聞 - 2009年1月7日)

農水省は先月「新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて~我が国の食料自給力・自給率の向上~」を発表しました。食料自給率50%のイメージを提示し、国民からの御意見・御要望の募集し、この1年徹底的に議論し、成案を得るとしています。また、今年度の補正予算では「田舎で働き隊」(農村活性化人材育成派遣支援モデル事業)の公募を始めました。

農村の活性化には、それを担う人材が必要となるが、高等教育機関や安定した就業の場が少ないことなどから、農村では青年層を中心に都市部への人口流出などが進み、活性化の担い手となる人材が不足している。 一方、都市住民の間では農村への関心が高まっており、また、都市住民が農村と協働して農村活性化に向けた取組に携わり、外部の者ならではの「気付き」をきっかけとして、農村の活性化が進展している事例も見られる。 このように、都市と農村の協働は、農村の活性化を図る上で有効な手段の一つであると考えられるが、その推進のためには、農村と都市部等の人材をつなぐ有効かつ汎用性の高い仕組みの存在が必要である。(参考:PDFファイル)

里山ねっとでは都市農村交流事業を行い、就農や移住に関する相談を受けておりますが、商工業が厳しい以上に農業もまた厳しいです。就業先のひとつの選択肢として農業を選ぶこともあってしかるべきですが、必ずしも門戸が広いというわけではありません。就農にあたり問われるのは農業がやりたいかどうかだと思います。農のあるライフスタイルには魅力もあふれていますが、仕事としてみると自然を相手に困難な面もあります。2月に行います綾部里山交流大学では、合鴨農法を確立した古野さん、休耕地の活用で起業した西辻さん、大和伝統野菜を研究・栽培し、レストラン「粟」を立ち上げた三浦さんなどを講師としてお招きします。講師の皆さんもまた数々の困難を乗り越えてこられたのではないでしょうか。そこに政策に反映させるべき現場の実際や、就農希望者に求められる精神があると思います。(マエダ)


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このページは、ayabeが2009年1月20日 19:53に書いたブログ記事です。

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