みすゞさんのこころ

「みすゞさんのこころ」
小学校に通う子どもの教科書を見ていたら、
童謡詩人・金子みすゞ(1903−1930)の
代表作「私と小鳥と鈴と」が載っていました。
●「わたしと小鳥とすずと」 詩・金子みすゞ
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけれど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし。
みんなちがって、みんないい。
***
こんなすてきな詩を
小さなときから学べるなんて、いいですね!
里山ねっと・あやべのホームページでは
「言葉の宝箱」として、
里山系のすてきなことばをコレクションしています。
わたしたちが求める里山のこころは
みすゞさんの詩の世界と同じかなって思います。
だからどうしてもみすゞさんの詩は
紹介せざるを得ないのです。
みすゞさんの詩には
わたしたちが取り戻したい
こころがつまっているように思います。
たとえば、「土」という詩がそうです。
●「土」 金子みすゞ
こッつん こッつん
ぶたれる土は
よいはたけになって
よい麦生むよ。
朝からばんまで
ふまれる土は
よいみちになって
車を通すよ。
ぶたれぬ土は
ふまれぬ土は
いらない土か。
いえいえそれは
名のない草の
おやどをするよ。
***
みすゞさんはほんとうに見えないものを
見る天才ですね。
いまとっても大事な感性がそれかもしれません。
みすゞさんの詩は
児童文学者の矢崎節夫さんが16年かけて、
遺稿探しによって、私たちは目にすることができます。
すてきな詩を遺してくれたみすゞさんと
矢崎さんに感謝です。
2006年5月31日の朝日新聞によると
みすゞさんが生まれ育った山口県仙崎村は
信心深い里だったそうです。
これも大事なヒントかもしれません。
●「みんなをすきに」 詩・金子みすゞ
わたしはすきになりたいな、
何でもかんでもみいんな。
ねぎも、トマトも、おさかなも、
のこらずすきになりたいな。
うちのおかずは、みいんな、
かあさまがおつくりになったもの。
わたしはすきになりたいな、
だれでもかれでもみいんな。
お医者さんでも、からすでも、
のこらずすきになりたいな。
世界のものはみィんな、
神さまがおつくりになったもの。
●「花のたましい」 詩・金子みすゞ
散ったお花のたましいは、
み仏さまの花ぞのに、
ひとつ残らず生まれるの。
だって、お花はやさしくて、
おてんとさまが呼ぶときに、
ぱっとひらいて、ほほえんで、
蝶々にあまい蜜をやり、
人にゃ匂いをみなくれて、
風がおいでとよぶときに、
やはりすなおについてゆき、
なきがらさえも、ままごとの
御飯になってくれるから。
●大 漁 金子みすゞ
朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ。
はまは祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の いわしのとむらい
するだろう。
●「つばめ」 金子みすゞ
つういとつばめがとんだので、
つられてみたよ、夕空を。
そしてお空にみつけたよ、
くちべにほどの、夕やけを。
そしてそれから思ったよ、
町へつばめが来たことを。
●「星とたんぽぽ」 金子みすゞ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの
かわらのすきに、だアまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
●「ふしぎ」 金子みすゞ
わたしはふしぎでたまらない、
黒い雲からふる雨が、
銀にひかっていることが。
わたしはふしぎでたまらない、
青いくわの葉たべてている、
かいこが白くなることが。
わたしはふしぎでたまらない、
だれもいじらぬ夕顔が、
ひとりでぱらりと開くのが。
わたしはふしぎでたまらない、
たれにきいてもわらってて、
あたりまえだ、ということが。
●「お日さん、雨さん」
詩・金子みすゞ
ほこりのついた
しば草を
雨さんあらって
くれました
あらってぬれた
しば草を
お日さんほして
くれました
こうしてわたしが
ねころんで
空をみるのに
よいように
●「蜂と神さま」 詩・金子みすゞ
蜂はお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
お庭は土塀(どべい)のなかに、
土塀は町のなかに、
町は日本のなかに、
日本は世界のなかに、
世界は神さまのなかに。
そうして、そうして、神さまは、
小ちゃな蜂のなかに。
(金子みすゞ童謡集
「わたしと小鳥とすずと」JULA出版局より)
(※文・塩見直紀)

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