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神と出会う旅 文●東 智子さん(大阪在住)
電話越しに キヌ枝さんの声を聞いて、今すぐにでも綾部に飛んで行きたい衝動に駆られました。何だろうこの感覚・・・。気持ちは綾部に飛んでいました。
6月のはじめ、2回目の民泊のためのお電話させてもらったときの事でした。
 
そして、6月も終わりの頃、NHK(BS2)でキヌ枝さんがの姿が現れ、素敵な笑顔、心地よい綾部なまりで語られているシーンを見ていると、ジーンっと涙が出てきたのです。
 
初めて、民泊させて頂いた時は、不安や緊張でかなり構えていましたが、今回は構えず、心も体もニュートラルの状態にして「素のまんま」で行く事にしました。
 
7月31日当日、台風10号の影響で大阪も風が強く時々雨もちらつき、行くべきか否か迷いましたが子供達が「行く!!」と譲らず、決行する事になりました。彼らの荷物の中に水着とゴーグル、花火セットが入っていました。
 
朝9時に家を出発、近畿自動車道・中国自動車道を通り、秋に行った時には、霧に包まれていた舞鶴自動車道の景色は、美しい田園風景が広がっていました。高速の途中何度も強い横風に車があおられて「ひゃっと」する場面も何度かあり、雨も降ったり止んだりしていたので、子供達の目的が果たせるのだろうかと気がかりでした。
 
2時間もかからず綾部インターに着き、先ず蕎麦打ち名人須藤さんの新しいお店で昼食。ここから先は道に迷わず、無事キヌ枝さんの家に到着。
 
子供達は自分の荷物を持ち、競うように玄関に飛び込んで行きました。私もその後に続き、「ただいま!」お仏壇の前で、亡くなられたご主人に「また、お世話になります。お父さんの残された薪使わせていただきます。」と皆で手を合わせました。
 
そのあと、手作りの蕎麦ぼうろと、畑で採れたスイカを頂きました。かぼちゃ、トマト、なす、きゅうり、は全部猿にとられたそうです。スイカは早めに「ぼった」ので助かったと、その話しをニコニコと話されるキヌ枝さんは、わざと収穫を遅らせて猿達が飢えないように食べさせてあげているのではないかと思いました。
 
猿達のおこぼれのスイカを食べつくした子供らの声が、谷あいの村に響いていました。「まさか」とは思ったのですが、その「まさか」が的中。服のまま小川で「ジャバジャバ」やってるではありませんか。でも念願叶って遊んでいる姿を見て、そっとして置こうと思いました。
 
そのまま私は、蔵に行き本を読んでいると急に眠たくなりうつらうつら・・・。虫やカエル、とんびやカラスの鳴き声と、台風の余波で、上空をジェット機が飛んでいるかような轟音が、 裏山から地響きと共に聞こえてきます。そこに、村の中を響く嬉々とした子供の声・・・。なんとも幻想的な空間・・・。
  
そんな中に身を置いていると「虫やカエル、とんびやカラスも、猿も人間も、偉大な自然に生かされているな・・・。」と感じるのでした。里山の人は常にそれを感じ、八百万の神に感謝するんだなと思いました。だから心が強いのね。だから、人にやさしく出来るのね。
 
強いのは心だけではないでしょう。体もよく動かし、安全な物を食べていますから、都会の人に比べて明らかに健康体だと思います。里山には、心も体も充実したバランスのとれた生活があるのではないかと思いました。だから私は里山の生活を求めているのだと・・・。
 
怒りの感情を「腹がたつ」と肉体的な部分で表現していたのに、最近は、「むかつく」=胸(心)の部分「頭にきた」=精神の部分の表現になって危険な状態だと聞いた事があります。むかつくと自分の心にも傷を負うのだそうです。ちょっとした事でも、感情が傷にしみて、泣いてしまうらしいのです。
 
私が、テレビでキヌ枝さんを見て涙が出たのは、無意識に心に傷を負っていたかもしれませんね。キヌ枝さんの心の強さを求めていたのだと思います。都会で住む人間は、心も体も自分自身でコントロールしなくてはいけませんが、なかなかそれが出来ないので癒しを求めるのでしょう。
  
私がボーっとしてる間、子供達は夕飯まで、風や光、匂いや音を、体いっぱいに受け目がキラキラしていました。
五右衛門風呂に2回はいって、豊かな里山の幸を頂き、暗くなるのを待ち、強い風の中 花火を楽しみました。
 
翌朝、朝食もそこそこに、子供は 虫取り網を持って飛び出して行きました。しばらくすると小川で歓声が・・・。水着とゴーグルは何のため?服を着たまま入るのが楽しいのでしょうね。どうやら午前中の出発は無理のようだったので、キヌ枝さんに昼食をお願いしました。
 
実は、到着した時から、玄関に 半分に割って節がとられた竹がた立て掛けてあったのを、子供はとても気になっていた様子でした。「キヌ枝さん、そうめんをお願い出来ますか?流しそうめんしてやりたいのですが・・・。」「それは楽しいわ。やってみよう。」と、お庭の 二本の名木の木陰に、水が木の根元に流れるように竹を設置し、竹の傾斜角度、水の量の調整をしてセッティングOK。
 
ざるにいっぱいのそうめんは、キヌ枝さんの口にも、ビデオを撮っていた私の口にも入る事なくほとんど子供達が食べてしまいました。勢いで食べてしまうので普段の倍は茹でないとだめだと言う事も分かりました。
 
木陰はとても気持ちよく、離れの縁側に腰をかけて醤油で握った紫蘇おにぎりを頂きながら又、ぼんやりしていたら・・・。
 
この二本の木は、暑い日差しから、強い風から、冷たい雪から数百年この家を護って来たんだな〜。この家に訪れる人達を何も言わずに気持ちよく受け入れて、優しく見送ってきた・・・。
 
そんな庭の木の様な「素のまんま」に、世の中の強い風の合間を縫って、羽を休めにここに来るんだ。いつも黒っぽい服を着ている私は『旅烏』ってとこかな。
 
この木を吹きぬける強い風はどこへ行くんだろう・・・。「風に乗って遠くへ飛んでみよ。」と風に言われたような気がした。「いつでもここに止まりに来ればいいのよ。」と古木が言ったような気がした。深く息をしたら、地面から脳天へ、風が渦を巻いて「ぞわぞわ」っと抜けていく。その後「ぼわー」っとお腹のあたりから、何かが湧いてくる感じがしました。
 
ふっと我に帰って、時計を見るとちょうどいい時間。なごり惜しみながらあと片付けをして、帰りじたく。最後にキヌ枝さんと記念写真をとり、キヌ枝さんが見えなくなる最後のカーブまで手を降り続けました。
 
ついさっき降りだした大粒の雨は、車が校庭に入った時ぴたっと止み「里山ねっと・あやべ」の看板がはっきり見えました。1年越しで、やっと塩見さんにお会いできました。思っていた通りやさしいものごしでありながら心の中にアツイ物を持っておられる方でした。お忙しい中いろいろお話しをさせていただきました。
 
帰りの車の中で、「我々で力になれる事があればしてみたいね。」「どんな事が出来るだろう。」などと話しを弾ませながら帰ってきました。8月1日は、毎年大阪では、PL教団の花火大会があります。夕飯を食べ、屋上に上がって花火を見ていると、生駒山から おお〜っきい、真ん丸のお月様、雲の衣を脱ぎながら出てきました。こんな立派なお月様を見るのは初めてで、思わず、「いい旅をありがとう。いいお出会いをありがとう。」と感謝の気持ちでいっぱいで、手をあわせていました。やっぱりいるのよ神様って。風の神様、川の神様、木の神様、雨の神様、月の神様・・・・。私の神様作りの旅・・・・。
少しは、強くなったかな・・・・?やさしくなったのかな・・・・?あやべ 風の旅・・・・・。
 
●東 智子さんのプロフィール
1962年京都市生まれ、東大阪市在住。2児の母。
2000年、建築設計事務所SADO(サドゥー)を設立。
パース、デザイン、HP管理、模型、製図担当。
日々めまぐるしい忙しさに、体が資本と実感。
先ず、自分が心身ともに元気になる。
そして、回りの人達にも元気になってもらいたい。
いつまでも自分の足で歩けるように、
ウォーキングセラピストの修行中。

●東さん、2度目のエッセイ、ありがとうございました!
流しそうめん、天の配剤でしたね。すてきな想い出ができて
よかったです!お子さんも綾部を気に入ってくださっていて
うれしいです。本当に尊いメッセージをありがとうございました。
(塩見直紀)





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