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農家民泊体験記 文●加藤 泰子さん(奈良県在住)

綾部の市街地を抜けると、カーブを一つ曲がるたびに涼しくなっていく。窓を開けっ放しで走っていると、風がひんやりと肌に心地よく緑の濃い空気に変わっていった。

私は、里山ねっとで行われている「そば塾」の塾生だ。
今回は、その2回目があって、ちょうど夏休みのとれたダンナ共々参加させてもらおう!ということになった。

いつかは、自給自足の暮らしがしたいと思っている私は、この機会にダンナにも農の暮らしを知ってもらえたらという気持ちもあって、この夏休みの過ごし方に農家民泊を選んだ。
里山ねっとの塩見勝洋さんが引き合わせてくれたのは、その「そば塾」蕎麦の種を下さった八木穣さんだった。

どんな方だろうと、楽しみにしながら、夕方になってきたので先を急いだ。
八木さんのお家は、きれいな上林(かんばやし)川の前にあった。
お家に着くと、奥様の喜代子さんが出てこられた。やさしいお母さんという感じの方だ。

川の向こうに目を向けると、笑顔で手を振ってくれる人がいる。八木さんだ!喜代子さんと一緒に畑に向かった。

川をはさんだ向かいの畑でそばと黒豆を作っているそうだ。
「今日は、そばのおひたしでも食べてもらおうか」と言われ「そばって、おひたしになったっけ?」と思いながらも、出していただく時の楽しみにして農作業を終えられた八木さんとお家に帰った。

夕ごはんが並んだテーブルには、楽しみにしていた「そばのおひたし」があった。
「そばのおひたし」は、そばが芽が出てまびく頃までのものをおひたしにしたもの。
少し酸味があって、食べたことのない味だった。

横を見ると、ダンナが猛烈な勢いでご飯を食べている。
八木さんのつくったお米はカルゲン米といってしっかりしていて、とてもおいしかった。ダンナはお言葉に甘えて4杯も頂いてしまった。

食べる前に少し農についてのお話を八木さんとしたのだけれど、八木さんは「若い人達が入ってきていろんなやり方でやっている。みんな、いろんなことをしたらええ」と言われていた。そして「農業50年、人に雇われたことがないんや」とも。
自分の50年に誇りを持ちながら、でもその技術や知恵を押し付けることなく若い人達のやり方も温かくみることができる。それは農に対する誇りと自信に裏打ちされたものであるからなんだろう。素晴らしいなと思う。

夜にご近所の森井士郎さんの奥様が来られて、お話を聞いた。
ダンナ様とともにUターンされて無農薬でお野菜を作っておられるそうだ。
明日、そのハウスが見れるというので、楽しみにしながら、森井さんを見送ると、見上げた空は満天の星空。降るような星空という表現が本当にぴったりの夜空だった。

2003年8月23日(金)

朝起きると、すでに八木さんはもう起きて一仕事終えられたところらしい。
朝ごはんを終えた後に、そばを粉に挽く機械などをみせていただく。やっぱり、蕎麦のことを話されるときが一番いい顔をされているなって思う。

それから、ダンナと二人で森井さんのハウスに向かった。ハウスの中から、旦那様が出てこられた。ハウスは、水菜が芽を出したところだった。

「自分達は退職した後の就農だけど、若い人は何か他に仕事を持ってたほうがいい。これだけとなると大変だから」

そうなんだ。私が思っていたこと。
ここに来る前、私は書店で偶然ある本に出会っていた。半分は農、半分はX。Xは自分が天から与えられた仕事。使命。自分がなんとなく思っていたことが、すごくわかりやすく書かれていた。私が求めているこれからの生き方は、これなんだなって思った。

民泊という形でご縁を持つことができて、これは何かに導かれて綾部に来たのだなと思える。綾部に私の答えがあるのかな...。

八木さんご夫婦に、おみやげにそばの種ときれいな鉢植え、畑のお野菜、地元に伝わる金毘羅講のお話しを書かれた本などをいただき、お別れの挨拶をした。

大事な時間を過ごせたという気持ちと、まだまだそこに居ていたいなと思う気持ちと。
私には田舎が無いけれど、田舎に帰るってこんな感じなんだろうか。

また、来ますね!と思いつつ手を振って、そば塾に参加するため里山ねっとへ向かった。
この日の作業は、そばの間引きといのしし除けの竹の切り出しだったが、もんぺに笠のいかにもな格好の私よりダンナのほうが手際がいい。この人、農作業に向いてるんじゃないかななんて思ったりもする。

間引いたものは、何にしようかと考えたけれど、やっぱり同じおひたしにした。食べながら、八木さんとのお話を思い出したりして。

八木さんにもらった種は、最近自宅の近くに借りた畑に来年蒔くつもりだ。
そして、また種ができれば農を通じて知り合った人にお分けできればって思っている。

八木さんから始まった種で、いろんなところに蕎麦の花が咲いて、みんなとつながっていける。また一つ素敵な出会いができて、普通の旅行では味わえない夏休みになった。

八木さんご夫妻、里山ねっとの皆様、貴重なご縁と体験をありがとうございました!
そして、これからもよろしくお願いします!

※加藤さん、素敵な農家民泊体験記をありがとうございました!







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